森村泰昌/時を駆ける美術
評価:
★★☆☆☆
出版社:
光文社(知恵の森文庫)
衒学や押し付けで構成された評論ではなく、非常にわかりやすい言葉と独自の視点で美術を語っているので好感が持てる。既存の美術の魅力を理解した上で、それをある意味で冒涜している彼らしいユニークな文章だ。例えば、ピカソの「ゲルニカ」を引き合いに出して「良い絵なのか、そうでないのかわからない」とさえ言っている。ピカソを評する上で最も正しい言葉は「わからない」だと思うが、「わかった」素振りをしない森村は潔くて面白い。美術初心者が「美術鑑賞の副読本」として読むものではなく、芸術家の文章に触れることで、今一度「芸術」を考え直すための上級者用のマニュアル本である。
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