村上龍/恋愛の格差
評価:
★★☆☆☆
出版社:
幻冬舎(幻冬舎文庫)
村上のエッセイが面白いのは、誰もアナウンスしないことをはっきり言ってくれるところだろうか。「変だな」と思うことを、しっかり文章にしてくれる。「経済格差が露呈し始めた現代の日本では、恋愛にも格差が生じてきている」というテーマで書かれたエッセイ集だが、実際は市場経済の社会化、日本語の多様化、人生モデルの消失、マジョリティとマイノリティ、引きこもりやフリーターの現状を暴く中で、個人の生活スタイルが変わってきていて、そのことを多くの人が気付いていない、メディアはアナウンスしない、そのことに危機感を持て、という彼お得意の理論展開が為されているだけだ。個人の生活スタイルが変わってきているということは、同じように恋愛スタイルも変化しているとわざとらしく付け加えることで、辛うじて「恋愛」に関するエッセイとして読めるだろうか。
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