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「砂に埋もれる家に住む女」という一つのアイデアを壮大なサスペンスに仕立て上げ、人間の本質を抉り取る。物語が進むにつれ主人公は観念的になっていき、諦念と反発と愛欲がごちゃ混ぜになった感情に狂わされていく。短編でも充分なのに、しつこく精緻に描き込んだおかげで、この作品は稀有なものになった。
森山が撮ると民俗学の象徴とも言える遠野ですら「都市」になってしまう気がする。「ふるさと」無き彼が遠野に拘る理由はわからなくはないが、「ふるさと」無き視点が森山の写真の根源であると思うので、いささかコンフリクトな印象がある。
前半の推理劇が後半で逆転するという奇想天外な構成でありながら、そこにこそミステリーとしての巧さがある。また、蜘蛛男の不気味さ・猟奇さ、そして明智をも上回る頭の回転の早さ。稀代のキャラクター造形がサスペンス性を強め、乱歩作品の中でも特別なものに成り得たのだろう。
前2作と比べてよりフィクション性が増し、パワーバランスを無視した小太郎の能力のせいで、戦闘シーンに迫力がない。各キャラクターが魅力的なので、なんとかテンションは保てているが、すっきりしないラストも残念だ。
少しの史実とオリジナリティ溢れるフィクション部分の兼ね合いが上手い。伊賀忍者達の荒唐無稽とも思える忍術も、アクションや駆け引きの材料として自然な感じがする。ともかくスピード感があり、残酷なまでの戦闘シーンも痛快。エンターテインメントとしての歴史小説の在り様を示した。