三島由紀夫/潮騒
評価:
★★★☆☆
出版社:新潮社(新潮文庫)
三島作品の中では比較的読みやすく、およそ三島らしくないほどのストレートな恋愛物語である。ただ、文体そのものには彼独特の視点というか美意識はあって、島や海の繊細な描写や、純愛を貫くがゆえ苦悩する男女の心の機微など、例え物語が「らしくない」としてもやはり三島作品であることに変りはない。読み慣れた人には物足りなさを感じさせるくらい、あまりに禁欲的な愛しか表れず、怒涛の展開もないまま、緩やかなハッピーエンドが待っている。そこに多少の歯痒さも感じる。
PR