東浩紀/動物化するポストモダン―オタクから見た日本社会
評価:
★★☆☆☆
出版社:講談社
(講談社現代新書)
現代社会を規定する上でポストモダンという概念は非常に便利で、あらゆる思想・文化はその一言で結論され得るわけだが、裏を返すと明確なものが何もないということでもある。サブカル、特にオタク文化(その中でもアニメやノベルゲーム)がポストモダンを土壌としているのは確かにそうなのかも知れないが、何とでも解釈できてしまうという点で、発見の少ない評論だった。
関連:
東浩紀/ゲーム的リアリズムの誕生―動物化するポストモダン2PR
鹿島茂/SとM
評価:
★★☆☆☆
出版社:幻冬舎
(幻冬舎新書)
SMを文化的側面から回顧した本書は、主に宗教の影響による発展を示唆している。が、いまいちピンとこない。より精神論に傾倒しなければならないロジックがあるはずなのだが、そのあたりを見過ごしているような印象を受けた。つまり、宗教がSM発生の土台を作ったということまではわかるが、それが文化とし定着するまでに経るべき過程がすっぽり抜け落ちている(文学等を引き合いに出してはいるが)。
保阪正康/あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書
評価:
★★☆☆☆
出版社:
新潮社(新潮新書)
日本における戦争の形、その全体像は見えてくる。しかし、明確な出典先が示されない資料や発言を基にした、著者のやや右寄りな視点が加わることで、結局「何だったのか」をわからなくさせてもいる。「戦争を引き起こしたのは実は海軍だった」という糾弾は面白いが、なぜ責任をそこに持っていくのかわからない。ただ、こういう書物が売れる背景というのは興味深い。一般的なヒューマニズムしか映し出さない「戦争」については、誰もが無知なのだ。
野村喜和夫/現代詩作マニュアル―詩の森に踏み込むために
評価:
★★★☆☆
出版社:
思潮社(詩の森文庫)
現代詩のシーンにおいて、かなり精力的に詩人活動を行っている野村喜和夫による、わりと初歩的な詩論。ここ50年の現代詩の歴史の紹介から始まり、詩とはどういうものなのか、という原理をわかりやすく紐解いている。ただ、ある程度「現代詩シーン」に傾倒していないと、やはり理解しにくいだろうか。「詩とは何か」ということを考えたこともない多くの自称「詩人」に、詩の知識・技法・良質な作品への理解・詩を書くことの意義や必要性を確認させる意味では、良い書物だと思う。
特務機関調査プロジェクトチーム/エヴァンゲリオン完全解体全書再起動計画
評価:
★☆☆☆☆
出版社:
青春出版社(青春文庫)
いくつかの仮説を立て、それによって検証を行うという体裁だが、実際に書かれているのは学術的な啓蒙と、根拠のないお粗末な憶測しか表れていない。これまで議論され尽くしたエヴァを解読する手助けにまではならず、よほど仲間内でああでもないこうでもないと語り合う方が真実に近付きそうな気がする。